東京新聞:社会の矛盾と向き合う2人、ネットに文章保存で拘束 中国は今

2020-07-13

中国政府が検閲でネット上から削除した記事や文章などを保存・公開していたグループが北京の公安当局に摘発された事件で、拘束された若者2人の関係者らは、2人がいずれも「もの静かで真面目」と評す。関係者の話からは2人が社会の矛盾に向き合ううちに、当局が問題視する活動に関わったことがうかがえる。(北京・中沢穣)

統制された情報をネット保存で拘束

拘束されたのは陳玫(ちんばい)氏と蔡偉(さいい)氏=いずれも(26)。陳氏の兄、陳堃(ちんこん)氏(33)によると、2人は4月19日に拘束、6月12日に公共秩序騒乱容疑で逮捕された。 2人は「ターミナス」というグループに加わり、左派学生らによる労働者支援や北京市当局による低所得者迫害などに関する文章などをネット上に保存していた。いずれも情報統制の対象となった事案だ。

新型コロナウイルスに関して中国当局の対応を批判した報道も含まれ、陳堃氏は「逮捕のタイミングから考えると、新型コロナが摘発の引き金になった」と推測する。

ターミナスについて、兄弟は1度だけ言葉を交わしたことがある。陳堃氏がたまたまターミナスのサイトを訪れ、弟のニックネームを見つけた。「気を付けるように言うと、弟は『分かった』とだけ答えた」

陳堃氏は非政府組織(NGO)の活動などに関わった経験があり、「当局に目を付けられたら、警告や脅しを受ける危険がある、と考えた」と話す。だが情報統制の厳しさは予想を上回った。「いきなり逮捕とは想像しなかった」と声を落とす。

陈玫照片

拘束された陳玫氏=関係者提供

「自分たちも知らない運命を背負っているのか」

ターミナスは、主にIT技術者らが使う会員制交流サイト(SNS)「GitHub(ギットハブ)」を活用して中国当局の情報統制をかいくぐっていたのが特徴だ。兄弟は、中国社会の矛盾やネット規制を避ける方法についてもよく意見を交わしたという。

陳堃氏は弟が大学生のときに、農村を支援するボランティア活動への参加を勧めた。この活動を通じ、後に同時に逮捕される陳玫氏と蔡氏が出会った。

蔡伟照片

拘束された蔡偉氏=関係者提供

ネット上には蔡氏が6年前に発表した文章が残り、社会問題に悩む青年の姿が浮かぶ。「90年代生まれの私たちは、自分たちも知らない運命を背負っているのか」。日付は6月4日。1989年に民主化を求めた学生らが武力弾圧された天安門事件が起きた日だ。文章は貧しい農村出身者に街角で出会った挿話から、貧富の格差やネット上の情報統制に思いをはせる。

陳堃氏によると、2人は北京市朝陽区の拘置所で拘束されている。当局は家族が委託した弁護士を妨害しており、家族との接見などは実現していない。

朝阳看守所

陳玫氏と蔡偉氏が拘束されている北京市朝陽区の拘置所=中澤穣撮影

————————————————————————————————————————————

【特别声明】本文已获日本「東京新聞」授权转载。

【原文链接】https://www.tokyo-np.co.jp/article/42128

【原文作者】中沢穣